豪雪地帯 峠駅から滑川温泉
2022-0122 滑川温泉
午前2時起床、夜更かしの人はまだ起きている時間だ。荷物を車に積み込み3:05出発。
橋爪さんをピックアップするコンビニに着くとそれらしい荷物がコンビニの前にある。店内に今朝の朝食を買いに入ると自分と同じような身支度をした橋爪さんがレジにいた。順調に進んで、3:35ひぐまさん宅着、ひぐまさんは車を動かしている最中だった。暗い中荷物をひぐま車に積み替える。北村さんを最後のピックアップに向かう。4:00には出発して一路山形新幹線の峠駅に向かう。
車中は特筆すべきことはないのだが、北村さんがとても元気で活動的な人であることが確認できた。雪原で大きくジャンプするラインの個人識別マークがなるほどぴったりだ。
次第に明けてくる東の空が広くあかね色に染まりとても美しい。
米沢に入ると除雪された道脇の雪の量が増える。山道に入っていくと一挙に積雪は増える。路面も両脇の2㍍にもおよぶ積雪も真っ白で除雪の雪だまりのため道幅も狭まり、雪に取り囲まれて進む。雪の量が多すぎて途中車で進めるのか危ぶまれるような箇所もあった。
このような先に新幹線の駅があるとは考えにくかったが、雪に埋もれて「峠駅」はあった。駅舎は雪にほとんど埋もれてしまって「峠駅」の看板だけが駅があることを示している。
しかし車が駅舎に入ると中は体育館ぐらい広い。車がかなり止められるようになっている。ここまで車で来て新幹線に乗る人のためだろう。支度をしている間に2本新幹線が通過した。身体を動かしていないので寒い。
ここで橋爪さんのスキーのシールが機能しないことが判明した。急遽橋爪さんも歩行グループに加わることになった。スキー靴の他に冬用登山靴を持ってきて良かった。
「峠駅」から滑川温泉に向かう。雪中歩行で2時間の予定である。スキーグループはもちろんスキー、歩行グループはスノーシュウかわかんである。スノーシュウは濱邊さん、わかんは菊池さん、橋爪さん、私。
考えてみると私はわかんで長い距離を歩いた経験を思い出せない。はじめてのわかんによる雪中歩行だ。私は以前に牧場を短い距離わかんで歩いた記憶が有る。その時他に人はツボ足だったのでわかんは快適であるとの印象が残っていた。水の上をゆくあめんぼのように雪の上を軽々とわかんで歩く。そんなイメージである。
駅を出発してすぐに滑川温泉を示す指導標が有るが雪に埋もれている。濱邊リーダーが雪をよじ登りストックで指導標についた雪を掻き落とすが見た目は柔らかそうだが雪は凍っているらしく簡単には掻き落とせない。
わかんを着けているとスキーグループがやってきた。先にスキーグループが行く。吹き積もった胸ぐらいまである雪を乗り越えてその跡を歩行グループが行く。
雪は純白の真綿のようだ。スキーグループが先行しているが雪はわかんでもまだ沈む。一歩一歩雪に沈んだ足を引き上げ進む。足が重たい。なにやらスノーシュウが快適に見える。スノーシュウはわかんより面積が広い分沈みが少ない。それがうらやましい。
わかんは水の上を行くあめんぼではないことが骨身に染みる。わかん歩きに慣れていないせいだろうかとてもくたびれる。景色は雪に何もかも埋もれて美しい。沢も岩の上に1㍍も2㍍も雪がこんもりとつもっている。木々の枝にも重く雪が積もっている。写真を撮りたいがその気力がわかない。
特に大きな登りがあるわけでもない。ちょっとした峠があったぐらいか。2時間の予定が3時間近くかかったのは私がばててしまったからである。
滑川温泉に到着、しかし私が考えるのは帰りもまたこの道を歩くことである。
滑川温泉は秘湯として有名である。雪のない季節には大人気の温泉である。しかし、この季節に温泉に行こうと思えばこの雪の中を歩いてくるしかない。訪れる人は滅多にいない。
温泉宿の福島屋に2階から入る。腰を下ろすと雪に沈んでわかんを外すのが難しい。
温泉は実に良い。木造の湯船でお湯には湯ノ花が舞っている。お湯は湯加減もちょうど良い。いつまでも浸かっていたい。
小林さんはめざとくビールの販売機を見つけて温泉に浸かり一杯やっている。
この福島屋の近くに大滝という大きな滝がある。これも有名で見所になっているのだが、この大滝のかかる大前沢という沢がある。この沢が「いままでの沢の中で最高だね。特に秋の紅葉の時期は。」と小林さんの弁である。普段からそんなにお喋りな人ではない小林さんのこの言葉には強く引かれた。行けるものなら遡行してみたいと昔女の子に惹かれたような心の動きを感じた。沢は多くの人の目には触れないが輝くように美しく少し危険で、良いなとおもう。
温泉に少し長く浸かりすぎた。昼食の時間がきつくなった。急いでパンを詰め込み、スープを飲む。みんな荷物をまとめる。
「小林さんは?」さっき脱衣所でもう服を着ていたのにまだこない。みんな気にしながら帰路の準備を進める。まだこない。どうしたんだろう。
やっと、小林さんが現れた。「財布がみあたらない。宿の中を自分が通ったところ全部見たんだけれど」「ビール買ったときは有ったんでしょ」それはそうだ。
濱邊リーダーが「隆太郞さん先に出てて良いですよ」と言ってくれる。そうなのだ帰路が気にかかる。荷物をまとめて出口へ向かう。後ろで大きな笑い声が聞こえる。財布が見つかったのか。
雪のなかでわかんを履くのが難しい。どうにか着けて出発する。スキーグループがなめらかに傍らを追い抜いていく。「じゃまたあとで」
雪の山中はきれいだ写真を撮りたいがその余裕がない。わずかな時間で濱邊さん達が追いついてくる。このコースは大きな標高の上り下りが有るわけではない。ほんのスノーハイクだ。これで明日西吾妻山に登れるのだろうか。これが私の現在の大問題だ。
峠のあたりでスキーグループが遊んでいる。峠からは滑り降りるだけだ。歩行グループにとっても下りはありがたい。やっと「峠駅」に到着、白布屋に向かう。
民宿白布屋の隣は酒屋のかもしか屋多種多様な日本酒がある。
白布屋は囲炉裏のある民宿で、米沢牛野焼き肉が売り物、楽しく盛り上がっておいしい酒を頂き、おいしい焼き肉を頂いた。