・1978年創設
・東京都山岳連盟所属
・例会毎月第1水曜日

剱岳南壁A2

2020/09/20(日)〜09/23(水)
報告者
浅井
山域
北アルプス
ジャンル
岩稜登攀
天候
曇り時々晴れ
行程

20日(日):稲田堤3:30~調布IC4:00~安曇野IC 6:30~扇沢駅7:40~黒部ダム12:45~室堂13:45~雷鳥沢キャンプ場14:25~劔御前小屋15:50~剱沢キャンプ場16:30

21日(月):剱沢キャンプ場3:50~剣山荘4:20~前剱5:30~平蔵の頭6:20~南壁A2取付きテラス6:45/6:50~剱岳9:50/10:40~前剱12:15~剣山荘13:20~剱沢キャンプ場14:10

報告

3年前から9月の剱岳・立山を狙っていたが、ことごとく台風で流れ、4年目にしてやっと実現した。当初は阿曽原から池ノ平、小窓から北方稜線の予定だったがコロナ渦の影響で池ノ平のテント場が使用不可、早月尾根を狙ったが早月小屋も休業で水が得られないので、ノーマルな剱沢からのルートにした。
一般ルートでは登頂の感動が薄いので、42年前に登った本峰南壁A2ルートに決めた。
使用ロープについて、手持ちのエーデルワイスの10.5mm×50m(シングル)は重いし、マムートの9mm×50mはダブルロープでロープが硬く使用感が悪いので、思い切ってロープがしなやかなエーデルリット スイフト プロドライ8.9mm×50m(シングル)を急遽前日の19日に購入した。

9月20日:黒部立山アルペンルートで室堂まで入山するため扇沢に8時到着、9時の電気バスに乗る計画を立てた。稲田堤を予定より30分早く3時半に出発。もちろん高速の渋滞もなく7時10分に扇沢臨時駐車場に到着。7時30分にチケット購入のため列に並ぶ、何重にも折れ曲がった人の列で、いつチケットが買えるか見当もつかない。10時半にようやく12時30分発のバスのチケットを購入。バスに乗るまで2時間あるので、屋上の展望台に上がってビールを飲みながら、明日の剱岳登攀のロープワークの練習をする。
並んでからバスに乗るまで5時間、想定になかった前代未聞の出来事だった。バスに乗ると乗り継ぎが順調で、13時45分に室堂に到着。
天気は上々、立山連峰とその奥にひょっこりと頭を出した剱岳がよく見える。ミクリガ池から雷鳥沢を見下ろすと、ものすごい数の色とりどりのテント、バスの混雑といい、この立山一帯は大盛況のようだ。雷鳥沢から一気に剱御前小舎まで登り、眼下に見えるおびただしい数のテントが張ってある剱沢へ下る。
剱沢のテント場は広大でどこか空いているだろうと思ったが、やっとの思いで少し傾斜した設営適地を見つけ、エスパースマキシムXシングルウォールテントを張る。すぐに空にしたザックに水筒を入れ、剱沢小屋にビールと酎ハイを買いに急ぐ。ビール500ml 800円を2本、酎ハイ350ml 600円を4本、合計4000円と少々高くつくが、冷えたビールには代えられない。ここから急坂を登り、こんこんと湧き出た水場で水を汲みテントに戻る。最初は外で飲んでいたが、風が冷たく身体が冷えてきたので、すぐにテントに入る。明日は早いので、少々傾いた今日の寝床に敷いたシュラフに身体を入れる。扇沢でチケット購入で並んだときは、どうなる事かと心配したが、結果順調に本日を終える。

9月21日:2時半起床。朝食をとって4時少し前に出発。剣山荘には光々と明かりが灯っている。そこから前剱までヘッドランプの光が点々と続いている。いったい何時に出発したのだろう。剣山荘の前には大勢の人。ここから気合を入れ直して、曇り空の中たんたんと登る。前後には人、人。あたりは真っ暗だが活気があってたいへんよろしい。一服剱を越えて、ようやく明るくなってきた前剱の頂上に着く。あたりはガスっていて、時折風と共に水分を含んだ霧が吹く。たまらず雨具を装着。先が思いやられるが鎖場が連続する平蔵の頭を慎重に通過する。
平蔵のコルから顕著なテラスがある南壁A2の取り付きに向かってザレ場を下る。前後にいた人々が、あの人達どこへ行くのだろうと言う好奇な目で見ている。薄っすらと付いた踏み跡を辿って壁沿いを降りるが、テラス手前のガレが崩れやすく少し悪かった。畳二畳ほどの少し外傾したテラスで登攀用具を装着し、連打されたハーケンに確保者のセルフビレーをとって、登攀開始。
最初は凹角状のすっきりとした壁。右に寄りすぎて行きづまってしまい、久しぶりの本番のためか少し戸惑う。左寄りにルートを変更して突破、要所要所にハーケンが打ち込まれ、そこにクイックドローを掛けロープを伸ばす。ハイマツが現れるとハーケンが連打された顕著なビレーポイントに着き1ピッチ目を終える。
事前に家で練習をしてきたビレイデバイス ルベルソのセカンドクライマーをビレイする際のブレーキアシスト機能を使う。これはロープの流れが一方向でセカンド側のロープは下に引っ張られても動かない。ロープが張られていれば、ビレイヤーは手を放してもロープが流れないので安心だ。それを家で練習した時に前述のマムートのロープでは固すぎて、スムーズにロープが流れないので、強い力でロープを引く必要がある。何度も力強く引いて練習したせいで、右手の人差し指にまめができてしまった。それではまずいと思い、ローブがしなやかなエーデルリットのロープを急遽購入した所以である。
軽い力でセカンドのロープを引きながら、初めての本番の岩登りに悪戦苦闘しているであろうMさんが現れる。Mさんに繋がれたロープ本体でセルフビレーを取ってあげて、2ピッチ目に進む。気が付けば辺りは快晴。平蔵のコル付近に列をなす登山者がこちらを見ていて快適な気分でロープを伸ばす。最高のロケーションだ。4ピッチ目の少し立った岩塔もネットで学習した通り右に巻きルートを見つけて難なく突破。ここから先は傾斜がゆるくなり、開放的なリッジを楽しむ。さらに傾斜が緩くなった所で、一息入れて水分を補給。ここでロープを束ねてコンティニュアス(通称コンテ)で同時進行。頂上間近の稜線に列をなす大勢のギャラリーに見守られながら、さらに大勢の登山者でごった返す剱岳山頂に到着。爽快な気分だ。
ロープを畳み、登攀用具をザックに納めて、頂上写真撮影のための列に並ぶ。30分程待って順番が回ってくる。自分たちも含めて皆、高揚した気分なのだろう。たいへん明るい雰囲気だ。頂上の祠とすぐ横の岩塔に上がって、本日の成果の写真を撮影。下りの渋滞を心配して、すぐに下山に取り掛かる。要所要所そこそこに渋滞していたが、カニの横ばいも含めて依然来たほどの待ち時間ではなかった。まわりの列に合わせてゆっくりと下るが、前剱と一服剱の登り返しは少々しんどかった。一服剱を越えると程なく剣山荘が眼下に見え安堵する。
剣山荘の混雑したテラスで一息ついて、けだるい身体にムチ打ちながら、ゆっくりと剱沢小屋に向かう。剱沢小屋で定例のアルコールを購入。本日はビール4本、酎ハイ2本の合計4400円。少々高いけどテント場について乾杯する事が一番の楽しみだ。最後の急坂をヘロヘロになりながら水場で水筒を満タンにして、今宵の宿に到着。今日も最初は外飲みだったが、曇っていて風が冷たく身体がすぐに冷えてきたので、酒とつまみを撤収してテントに退却。中に入ると程なくガスが切れ、テントの中から絵に描いたように見事な本日の成果の剱岳が姿を見せる。満足、満足。その後、ヘリが前剱と本峰の間でホバリングしている音が山々に響く。疲れた身体に夢見心地にその音を聞きながら、いつのまにか眠りにつく。

扇沢のバス停。ディズニーランドより酷い混み具合。
ロープワーク練習中。
ミクリガ池。
地獄谷からの奥大日岳。
雷鳥沢キャンプ場のテント場。色とりどりで綺麗です。
劔沢キャンプ場テント場。こちらも混み合っています。
明日登る劔岳。
朝から人の列です。
南壁A2取付テラス。準備中。
登り始め。
悪戦苦闘中。
ロープまとめて感無量。頂上まであと少し!
頂上の祠。写真撮影で順番待ちしている人・人・人…。
カニの横ばい。行列です。
南壁A2取付のテラス。
ビールを飲みながら、ホッと一息。テント内からの劔岳を望む。