伯耆大山
6:00 夏山登山口
7:30 六合目避難小屋(休憩10分)
8:30 弥山山頂(休憩40分)
10:00 六合目避難小屋(休憩20分)
11:20 大堰堤
11:50 大神山神社
開山1300年を迎えた霊峰・大山。山腹の某ホテルで「日本山岳修験学会」が開催されたのを機に、1日延泊して登ることにした。
天気予報はあいにく「正午から雨」。雨を避けるため、日の出とともに宿を出発し、夏山登山道を経由して弥山を目指す。
登山道はよく整備され、どこまでも階段が続く。周囲にはブナの原生林が広がっていた。
行者登山道を下った先にある元谷の方から、法螺貝の音が聴こえてきたのは、五合目を過ぎた頃のことだ。
大山北壁に殷々と吹き渡る、法螺貝の響き。
なんだか夢を見ているようである。
六合目避難小屋のそばのベンチで休憩を取った後、さらに山頂を目指した。
この辺りから低木が多くなり、尾根歩きとなる。
七合目を過ぎたあたりで、道は木道へと変わった。この木道は、登山ブームで荒らされたダイセンキャラボクの純林や高山植物を守るために設置されたものだという。
傾斜もゆるやかになり、気持ちのよい木道歩きが楽しめるものと期待していたが、尾根を吹き降ろす風は強く冷たく、登山者の甘い目論見を打ち砕く。
弥山山頂に到着したのは、朝8時半頃。
東側には、最高峰の剣ヶ峰から象ヶ鼻へと続く、険しい稜線が続いていた。
稜線を走る縦走路は、剃刀の刃のように、両側が鋭く切れ落ちている。
崩落が続き、あまりにも危険であるというので、今は立ち入り禁止となっているそうだ。
山稜の南壁では絶え間なく雲が湧き、一面の雲海となって山腹を覆い尽くしている。そして、北側には日本海。出雲の国引き神話の舞台となった、美保湾や島根半島、中海を遠望することができた。
山頂と避難小屋で40分ほど過ごした後、下山を開始。
来た道とは別のルートを通り、山頂直下の「石室」に立ち寄ることにする。
ここは、大山の歴史において最も重要な聖地であり、かつて「弥山禅定」という秘儀が行われた場所である。
古来、神の山・大山への登山は厳しく禁じられ、限られた日に、限られた役僧と先導者だけが登ることを許されていたという。役僧は写経した法華経を経筒に入れて池に沈め、霊水や薬草を採取して持ち帰った。その池を見たかったのだが、残念ながら見つけることはできなかった。
下山中、白衣の男性から声をかけられた。聞けば、吉野の金峯山寺の関係者で、先ほどから法螺貝を吹き鳴らしているのも、金峯山寺の修験者だという。明日の開山1300年祭で焚かれる大護摩のため、吉野から加勢に来られたとのこと。
明日かぁ。見たい。だが、さすがにこれ以上の延泊は無理だ。
「行者分かれ」から行者登山道に入り、三鈷峰や剣ヶ峰を眺めながら、紅葉の落葉樹林帯を下った。
途中、崩落した石で埋め尽くされた大堰堤で、大山北壁のパノラマを堪能。ここから林道を下って、正午前に大神山神社奥宮に着いた。
あぁ、間に合った。なんとか、雨をやり過ごすことができた。
ベンチに座って下山報告を書き始めると、にわかに雨が本降りとなった。