・1978年創設
・東京都山岳連盟所属
・例会毎月第1水曜日

明神主稜から前穂高

2017/10/07(土)〜10/08(日)
報告者
横山 
山域
穂高
ジャンル
ラウンド縦走
天候
晴れ
行程

7日(土)(曇り、小雨) 調布6:30=小梨平テント(1人800円) 明神主稜の取り付きまで偵察。
8日(日)(晴れ) テント4:00~4:48取り付き~7:53明神5峰~11:38重太郎新道(前穂頂上の手前)11:58~13:40岳沢ヒュッテ14:15~15:50テント

報告

明神岳主峰(1峰)は以前、冬に明神東稜から登っているが(前穂北尾根下降)、1峰~5峰の間は梓川沿いの道を歩きながら何度も見上げているにもかかわらず、まだ歩いていない(はず。何しろ50年も山登りしていると忘れてしまう)。というわけで、ずっと気になっていた稜線である。今回歩けて、人生を終える前の山の課題が一つ消えて、ちょっと嬉しい。
 事前にヤマレコ等の記録を見ると、小梨平からの明神~前穂ラッシュでは14時間から16時間かかっている(休憩込み)。最も早い単独行の人で12時間。小林さんと僕の平均年齢は64.5歳(ちなみに僕が69歳)。とても12時間では無理だろう、日暮れも早いし、ということで、ビバーク覚悟で計画した。ただ、ネット上の山の書き込みは、少し山をかじった程度の人の記述が多いので、表現が少々興奮していて、大げさなことが多い。「こんなに悪い」「こんなに大変だった」という叙述は信じないことにしている。ただ、取り付きがどこか、下降点がどこか、そういった情報には貴重なものがある。

 7日(土) 小梨平までのんびり入山。テントはちらほら、付近の紅葉がきれい。でも唐松の紅葉はまだまだ。テントを張ってから、明神主稜の取り付きまで偵察に行く。岳沢ヒュッテへの道をたどり、7番表示のある所が取り付き。風穴の100mほど手前だ。道は荒れている感じだけど、尾根筋だから問題ないだろう、と確認してテントに戻る。片道45分。

 8日(晴れ) 4時、真っ暗な中出発。ヘッドランプの明かりに濃い霧が煙っているが、この付近特有の川霧だろう。むしろ天気がいい兆候だ。7番表示から主稜に取り付くが、不鮮明な道もすぐにはっきりしてくる。迷うことはない。5峰に近づくと灌木交じりの細い岩稜のリッジが出てくるが問題なし。このリッジにはフィックスが長々と張られていたが、何のためのフィックス?という感じだ。積雪期のものであれば回収すべきだろう。こうしたルートで不要なフィックスは興ざめである。5峰近くになるとテン場が3~4ヵ所出てくるが、いずれも2~3人用であり、4~5人テントが張れる広い場所は1か所くらいしかない。
 急登を終えて5峰に達すると、頂上にはシンボルのピッケルが待っていた。ピッケル越しにこれからたどる岩稜が見渡せ、なかなかの光景だ。5峰~4峰間は問題なし。ルートもはっきり。3峰は岳沢側を巻くが全く問題なし。3峰を過ぎたあたりからルートが不鮮明になってくるが、それはたどるルートがいろいろに取れるからであり、つまりそんなに悪くないということ。2峰は懸垂20メートル2回で降りる。この辺りで2パーティに追いつき追い越すが、多分昨夜、主稜上でテントを張ったのだろう。誰にも会わないだろうと思っていたのだが、なかなかの人気ルートのようだ。確かに穂高周辺でこんなに静かなルートは余りないし、この角度からの穂高の峰々や上高地・梓川の眺めには格別のものがある。ほどほどの緊張感あるルート、眺めは絶景、人がいない、ということで僕もこのルートに大満足だ。この辺りで、この調子ならビバーク不要と確信した。
 ただ、かなり疲れてきて、楽なルート、楽なルートと選んでいたら、1峰(明神主峰)を巻いてしまった。ピーク下30メートルほどのところだ。巻き終えて気づいたが、戻る気力はナシ。1峰を踏んだことのない小林さんにはすまないことをしたが、「また来ますから」という彼の言葉をいいことに、じゃあ、またにしてね、と先に進む。巻いたところから奥明神沢のコルへはクライムダウン。普通は懸垂で降りるようだ。
明神の各ピークの巻き道はいずれも岳沢側だが、2峰から重太郎新道に達するまでは、いろんなところに踏み跡らしきものがあり、ルートの取り方によってかなり所要時間が変わってくるだろう。1峰から重太郎新道に達するまで基本的に踏み跡はあるが、しばしば不明瞭になるので、あくまでも自分の判断でルートを定める必要がある。
 重太郎新道に合流したころは二人ともかなり消耗。前穂高にはあと100メートル以上登らなければならず、躊躇なくカットし、20分の「中」休憩。打って変わって登山客ゴッチャゴッチャのなか下山開始。岳沢小屋では35分の大休憩。汗っかき小林さんは缶ビール2缶とジュース1本を飲む。僕はそれをちょっと盗ませてもらう。英気を養い、やおら付近の紅葉を愛でながら、小梨平へと下山。
 12時間を切るタイムで順調にラウンドできたが、これは小林さんと二人、小人数だったからと思う。終始ペースを変えず、懸垂も二人だから早く、クライムダウンもスムーズにでき、スピーディに行動できた。69歳の誕生日を迎えたばかりの僕としては、満足のいく山だった。但し、最後の最後、上高地のバス停が大混雑。タクシー待ち2時間弱。風呂入って、飯食って、渋滞に巻き込まれ、帰宅は午前0時となった。

5峰手前の岩稜隊。意味のないフィックスがある。
上高地の川霧と焼岳。
奥穂の稜線を望む。
無題
5峰頂上のピッケル。ちなみにヒッコリーのピッケルだった。
これからたどる稜線。厳しそう。
3峰の巻き。浮き岩に要注意だ。
2峰の懸垂、1回目。
同上。
同上、2回目。
小林さんです。
もうすぐ重太郎新道に着く。気はセクが脚は重い。
岳沢ヒュッテテント場の賑わい。
ヒュッテから明神を望む。
取りつきの「7番標識」に戻ってきました。