立山~五色ヶ原
22日(火):剱沢キャンプ場4:30~別山5:40:~北峰5:50~別山6:00
~真砂岳6:45~富士折立7:40~立山大汝山8:05~雄山8:35/8:50~一の越9:25/9:50~獅々岳12:20~ザラ峠13:30~五色が原14:10/14:15~テント場14:45
23日(水):五色が原2:30~刈安4:20~平の小屋5:25/5:40~ロッジくろよん9:15/9:40~かんば谷橋9:55~黒部ダム10:10/10:35(バス)~扇沢駅10:50
9月22日:昨日の疲れがあったので、予定より30分遅れの4時30分に出発。今朝は星が見え、天気は上々のようだ。剱御前への道を分け、別山に向かって急斜面を登る。剱御前寄りの稜線に辿り着く頃にはすっかり明るくなっていた。過去2回は別山を巻くルートを行ったが、今回は時間に余裕があるので別山頂上を目指す。
頂上の祠の前いたパーティーに写真撮影のために場所を譲ってもらう。撮影の後、その人たちの日の出を待つ姿を見て全然気にしていなかった日の出の瞬間に立ち会う。昨日の成果を胸に荘厳な気持ちだ。ザックをここにデポして気になった別山北峰へ向かう。後で調べると北峰の方が6m高い標高2880mだった(ここが別山頂上か?)。
剱沢小屋でアルコールを購入時に空き缶は持って帰って下さいと言われたので、Mさんがつぶさない空き缶10缶を透明のビニール袋に入れて、ザックの外にぶらさげてあった。その姿に後から来たパーティーに「たくさん飲みましたね」と冷やかされて、はずかしくなったMさんが「次に休む時にぜったいに缶をつぶしてザックに入れる」と息巻いていた。その袋をぶらさげたまま、急降下して先程の巻き道と合わさると、ゆるやかな稜線を真砂岳に向かって進む。
真砂岳の頂上に着くとあわててザックを下ろし、周りのすばらしい景色を見る事もなく、おもむろに力一杯缶を踏みつけるMさんだった。
ここから左下に内蔵助カールを眺めながら、立山に突き上げる白ザレの美しい稜線を進み、頂上に向かって急なガレをジグザクに登る。稜線に辿り着くと大勢の人が休んでいた。ここに荷物をデポして、北側に聳える「富士ノ折立」の岩峰に登る。標高2999mの剱岳と同じ標高だ。高曇りで遠望がきき、周りの山々が良く見える。
その先の最高峰「大汝山」もゴツゴツの岩の塊が積み重なった顕著な山頂だ。標高3015mで今回の山行の最高地点だ。剱岳の写真を撮って次の雄山に向かう。
雄山神社の社務所はコロナ渦のため8月17日に閉鎖されており、無料で鳥居を越えてグンと突き出た狭い山頂にしては立派な神殿が立つ雄山頂上に初めて立つ。前回は有料の為、スルーしてしまった所だ。まるで展望台として作られたかのような狭い頂上ですばらしい展望を楽しむ。遠方には富士山、八ヶ岳(編笠山・権現岳・阿弥陀岳・赤岳・蓼科山)、南アルプス(甲斐駒ヶ岳・北岳・塩見岳・荒川岳・赤石岳)と声に出して言っていると、そばにいた人が質問してきたので、白馬岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳、針ノ木岳、蓮華岳、薬師岳、黒部五郎岳、笠ヶ岳、槍ヶ岳、穂高岳と説明する。大満足で社務所を過ぎて、三角点がある地点で眼下に一の越山荘を見下ろす。
急な斜面をぞろぞろと人が登ってくるが、ここは登りと下りが一方通行で急斜面のジグザク道だがすれ違いがなく、しっかりとした登山道で下りやすかった。室堂方面から列をなして登山者が石畳の道を上がってくるので、一の越山荘前の広場は人でいっぱいだ。
計画では雷鳥沢キャンプ場に下る予定だったが、先程の三角点から五色ヶ原山荘がよく見えた時に、ごった返す雷鳥沢へ下るよりも、五色ヶ原へ向かう事に心は決まっていた。ここからあと4時間かかるので、残った酎ハイを1本ずつ飲みながら、渋るMさんを説得する。一の越山荘で五色ヶ原山荘の営業を確認する。
Mさんは、はあはあと息を切らしながら浄土山分岐のピークに登る。ここから室堂に下る選択肢もあると話すと、室堂から登ってくる登山者に辟易したMさんは五色ヶ原へ向かう事を決心する。
ここからは登山者はほとんどいない静寂な道だ。眼前の龍王岳への急斜面を登るのかと思ったが、右側の巻き道を行く事にホッとし、鬼岳も岩まじりのガレ場をトラバースする。ここで五色ヶ原から来たパーティーとすれ違う。五色ヶ原山荘の様子を尋ねると、小屋の営業はしていないそうだ。しかし従業員はまだいると聞き、ビール購入にわずかながら希望を持つ。
獅子岳との鞍部で小休止する。ここから急な登りで、決心した後2時間かけてようやく獅子岳に着く。五色ヶ原方面から4人パーティーが登ってきた。スゴ乗越小屋から来て室堂へ降りて帰京すると言う。しかし一の越山荘に予約を取ってあるので浄土山経由ではなく、一の越山荘に寄って予約をキャンセルしてから、室堂に下るとはご苦労な事です。
ここまで来てもまだまだとMさんに説明すると、うんざりとした顔をしている。ここからザラ峠までの急斜面を400m下る。ザラ峠で小休止して最後の150mの登りに掛かるが、右側に赤茶けて崩壊した山肌を見ながらゆるやかに登る。やがて木道が現れ、五色ヶ原が近いことを思わせる。左に本日のテント場を分け、急な階段を登ると五色ヶ原に辿り着く。ビール購入に一縷の望みをかけた赤い屋根の五色ヶ原山荘に到着する。
小屋閉めの作業をしている従業員にテントの受付を申し込むと、小屋の営業が終了しているのでテント代は不要との事。テント場の水の出が乏しいので、着いたら真っ先に水の確保をするように言われた。恐る恐るビールがあるかと尋ねると、何本欲しいのかと我々にとっては神がかったように聞こえた声に急いで小屋の受付に向かう。ビール350ml 600円を6本、合計3600円を購入。ほとんどあきらめていたビールが入った袋をさげて、ルンルン気分で木道をテント場に向かって下る。10分程で3張のテントがあるキャンプ場に到着。
剱沢と違って場所は選び放題だ。言われた通り、真っ先に水場に向かい4リットルの水を汲む。本当にちょろちょろで15分程かかった。テントを張る気力もないMさんを横目に急いでテントを張って、最後の宴会の準備をする。ここのキャンプ場は風もなく穏やかな気候に、ビールも進む。テントに入り、しばらくしてからトイレに行くために外へ出ると、10張程にテントが増えていた。明日は1時起床と早いのと、昨日とは違って平らな場所なので、今までの疲れも相まってすぐに爆睡モードに入る。
9月23日:予定通り1時起床。軽く朝食を摂り、辺りが明るくなる5時半に平ノ小屋に着くために逆算して2時半に出発。星が良く見え天気は上々のようだ。
最初はよく整備された木道を緩やかに下る。2362m地点から石がゴロゴロした急坂の尾根を下る。1時間半程で尾根を離れ、斜面を南東にジグザクに下る。熊鈴を忘れてきたので、「よっさ、よっさ」と一歩ずつ声を掛けながら、デコボコのない歩きやすい道を下る。やがてヌクイ谷に近づき、薄暗いが遠目に黒部湖が見えてくると平ノ小屋も近い。
小屋のベンチに座って休んでいると小屋の中から釣り人が出てきて、五色ヶ原から来たのかと尋ねられる。2時半に出てきたと言うと「へー」と感心された。平ノ小屋は3年前の読売新道以来だ。平ノ渡場から舟で渡って来て感慨無量だった事を思い出す。
急な石段を下って平ノ渡場に停泊している舟を懐かしく眺める。あと20分程で6時の始発便の出航だ。ただしここの舟は対岸に人がいる時のみの出航だ。小屋から双眼鏡で眺めてそれを決めるらしい。
最初の枝沢(中ノ谷)の横断に西に向かって進む、前回この道はアップダウンが少ない歩きやすい道と認識していたが、今回は意外とアップダウンがあり厳しさを感じる。そこを歩きながらその要因の3つの要素を頭に描く。1.前回はここまで2時間。今回は3時間。2.今日までの疲労が前回よりも蓄積している。3.3年、年を取った加齢か。
大きく黒部湖を離れ、白い砂の広い河原にかかった中ノ沢を2本の橋で横断する。ここから延々と対岸にロッジくろよんが見える箇所まで、平らなトラバース道と急な階段と橋の架かった難路を淡々と2時間歩く。ロッジくろよんが対岸に見えてから、これでもかと黒部湖から離れて西側に進むと最後の御山谷を橋で横断する。ここからも何本かの沢を橋で渡りタンボ沢を渡ると、ロッジくろよんへの上り坂になる。ロッジの前のベンチは日当たりが良すぎて暑いので、日の当たらない端のベンチに腰を下ろす。周りを見渡すと何とビールの自動販売機がある。ここからダムまでは整備された遊歩道なので、500ml 600円のビールで最後の乾杯をする。
ここを出発してすぐにキャンプ場がある。一人テントを張る準備をしていた。こじんまりとした良い雰囲気のキャンプ場だ。ゆるいアップダウンの遊歩道を進むと遠方にコンクリートのダムが見えてきた。長く立派なつり橋を渡ると舗装道路になり、トンネルを越えると黒部ケーブルの駅に着く。黒部ダムから3年前に辿った赤牛岳、水晶岳をバックに写真を撮る。トンネルを上り電気バスの黒部ダム駅に着く。
待合室に待っている人は数人。15分後に出発するバスのチケットを買って、10分待ってバスに乗り込む。行きは5時間、帰りは15分、帰りを平日にしてよかったとしみじみと思った。